産後のむくみ、なぜ起こるの?いつ治る?
産後の女性の88%がむくみに悩まされるといわれています。この悩みは産後2-3日目から起こりはじめ、産後しばらくは多くの方がむくみに悩まされています。産後のむくみはだいたい1ヶ月くらいで自然におさまるといわれています。
早く治すためには対策だけでなくその原因を知っておくのも大切です。産後のむくみはなぜ起こるってしまうのでしょうか。
産後のむくみが起こる原因
産後のむくみが起こる原因は、産後のママの身体の仕組みにあるのです。
出産によって大きかった子宮が小さくなり、子宮に流れていた大量の血液が手足などに流れます。また、ママの身体は母乳を作るためなどに水分をため込もうとします。このため、産後は体がむくみやすい状態になっているのです。
この状態であるのに加え、産後は慣れない育児のため睡眠不足、そしてなかなか運動もできず、検診が終わるまではシャワーのみで入浴ができないため、代謝も非常に悪くなっています。
水分をため込みやすくなっているのに代謝をよくできないという悪循環によって、むくみが起こりやすくなるのです。
特に、帝王切開で出産をしている場合、産後はすぐに動くことが難しいいうえに、点滴をする必要があり、産後のむくみが悪化する一因になっています。
入院中がピーク!ゾウの脚のようなむくみも
産後のむくみのピークは2~5日といわれています。そのため、入院中にむくみのピークを迎える方がほとんどです。
象のような脚になって持ってきたスリッパが入らない!なんていう経験をする方もいらっしゃるかもしれません。心配になるかと思いますが、徐々にむくみは落ち着きます。
産後のむくみをチェックする方法
むくみとひとことで言っても、過去にむくみを経験したことがないという方の場合、これはむくんでいる状態なのかどうかが分からないという方もいらっしゃいます。
ここでは、今自分がむくんでいるのかどうかをかんたんにチェックする方法をご紹介します。
産後に、むくんでいるのかどうかが気になるという方や、産後むくんだときに備えておきたいという方はぜひチェックしてみてください。
足の内側(柔らかい部分)を押すとなかなか戻らない
膝下15cmあたりのすねの骨の内側は、足の中でも非常に柔らかい部分となります。この部分を指3本で5秒間強めに押してみましょう。
むくんでいない脚は、手を離した後徐々に押した跡が戻ってきます。ですが、むくんでいる場合はこの押した指の跡がくっきりと残り、なかなか戻ってきません。
脚に押した跡が残り続けている場合には、むくんでいる可能性が極めて高いといえます。
靴下のゴム跡がつく
靴下を脱いで、足を見た時にくっきりと靴下のゴムの跡が残り、くびれたような形になっている場合にも、むくんでいる可能性が高いといえます。
上述した脚の内側と同様に、靴下の跡も通常であればすぐに戻るのですが、むくんでいる場合にはこの跡がなかなか戻りません。
出産前に履けていた靴がきつくて入らない
足がむくむと必然的に足の太さが変わります。そのため、出産前に吐けていた靴がきつくて入らないということもあり、ここで、むくみに気づくという方もいるようです。
産後以外でむくんだときには、少し足を動かしたり、足の位置を高くしてしばらく過ごしたりすれば靴も入ることが多いのですが、産後のむくみは一時的なケアでは改善しないことも多いです。
静脈瘤ができていることも
産後の身体のバランスによってできているむくみと思っていたが、実は静脈瘤(じょうみゃくりゅう)によるむくみの可能性もあります。妊娠した方の約70%に静脈瘤ができるともいわれていて、このときにできた静脈瘤によって産後足がむくむことがあるのです。静脈瘤自体は産後徐々に消失していきますので、静脈瘤が焼失したタイミングでむくみも徐々になくなっていきます。
産後のむくみへの対処法・準備しておきたいもの5つ
程度はそれぞれですが、高い可能性で産後にむくみが起こります。産後1ヶ月程度でおさまるとは言われているものの、むくみが辛くて日常生活に支障が起こるという方も。あらかじめむくみに対して準備をして置いたり、対処法を知っておいたりすれば、むくみに対して冷静に対処できるかもしれません。
ここでは、知っておきたいむくみの対処法を5つご紹介します。
むくみ対処法① 足首を回したり、ストレッチをする
足首を回したりストレッチをしたりすると足回りの血行や代謝がよくなります。産後は赤ちゃんのお世話に忙しく、大々的な運動はできません。ですが、足首を回したり、ストレッチをしたりといった動作は育児の合間にもすぐにできます。
授乳など座った姿勢が長時間続いた後や、赤ちゃんをあやすために長時間立ちっぱなしになった後にまずは、足回りの代謝をよくしていきましょう。
むくみ対処法② 足を心臓よりも高くする
脚を心臓よりも高い位置に置くことで、足に貯まっている血液が心臓に流れていき、むくみの改善につながります。座っている時に椅子やクッションを活用して脚を上に挙げられるとよいですが、赤ちゃんのお世話で忙しく、ゆっくりとすわっている暇がないという方は、就寝時に足に枕を置いて10cmほど上に挙げるとよいでしょう。
むくみ対処法③ 塩分の取り過ぎに注意する
塩分をたくさん摂ると、体内の塩分濃度を薄めようと身体は特に水分をため込もうとしてしまいます。ですので、塩分の摂りすぎには注意が必要です。
加工食品や、外食が好きという方は産後のむくみが治まるまでは食生活を変えてみるとよいでしょう。
また、塩分の排出を促す効果が期待できるカリウムを積極的に摂るのもよいです。
カリウムを多く含む食材にはバナナ、海藻、ほうれんそう、かぼちゃ、いちご、キウイなどがあります。
むくみ対処法④ マッサージをする
脚を回すだけでは物足りないという場合にはマッサージをして外側から圧をかけてみましょう。軽くさするだけでも血行をよくして、むくみの改善につながります。
なお、マッサージをするときには足先からももに向かって行うと効果がありますが、足先に向かってマッサージをすると逆効果となるので注意しましょう。
足首やひざの裏、足の付け根といった関節まわりも併せて行うとより効果的です。
むくみ対処法⑤ 着圧ソックスをはく
着圧ソックスとは、一般的な靴下よりも少し窮屈にできているもので、この外側から適度に描けられている圧によって、足の代謝を促していきます。
着圧ソックスを選ぶ時には、着用していて痛みや痺れがなく、動きに支障がないものを選びましょう。
だいたい20mmHgぐらいの圧がかかるものが望ましいですが、足先がうっ血している場合には絞めつけ過ぎです。
むくみ対処法⑥ 身体を冷やさないようにする
身体を冷やすと血行が悪くなり、むくみやすくなります。特に、産後はむくみのピークにあたる1カ月間は入浴もできないので、なかなか冷えをとることができません。
そのため、洗面器にお湯を張って足湯をしたり、足首を冷やさないように長めの靴下を履いたりするとよいでしょう。
温かい飲み物を積極的に摂り体内から温めていくのもよい方法です。
まとめ
産後は、身体の変化や育児の忙しさによってむくみやすくなっています。そのため、むくみがひどくならないようにケアをしていく必要があります。
1ヶ月ほどで徐々に消失していくとはいえ、むくみが続くのは辛いものです。できることから少しずつむくみのケアに取り組んでみましょう。
産婦人科専門医 柴田綾子先生からのコメント
産後数日たつと足を中心にむくみが出てきます。これは産後の体の変化の一つで、ほとんどが自然になおります。育児もあり大変ですが、無理のない範囲で足首の体操やマッサージをしてみてください。まれに足の血管が詰まってしまい治療が必要になることがあります(血栓症)。片方の足だけむくみが強かったり、痛みや赤みがある場合は血栓症の治療が必要になることがあるため医師にご相談ください。
監修者プロフィール:
柴田綾子(しばた あやこ)
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医、周産期母体・胎児専門医
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修し2013年より現職。女性の健康に関する情報発信やセミナーを中心に活動。
著書:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、産婦人科ポケットガイド(金芳堂,2020)。
女性診療エッセンス100(日本医事新報社,2021)明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社,2022)
参考:
浜松市子育て情報サイトぴっぴ https://www.hamamatsu-pippi.net/blog/hint/ninshin/8867.html
母子健康手帳 https://www.boshi-techo.com/unregistered/qa/detail.php?qaId=818
仙台市立病院医誌 http://hospital.city.sendai.jp/pdf/p097-102%2023.pdf
日本血管外科学会HP https://www.jsvs.org/common/kasi/index.html