産後ケアについて、政府から「伴走型支援」という言葉が聞かれるようになりました。妊娠中~産後~その後の育児まで、切れ目なく支援することが目的といわれ、産後ケアをクーポンで受けられる案も打ち出されています。政府が総合経済対策に盛り込む出産・育児の「伴走型相談支援」について、ニュースや政府の発表を元に解説します。

経済的理由で産後ケアを断念する人は少なくない
自治体の産後ケア事業を利用する場合は、利用料の一定額が補助されます。しかし、例えば宿泊型の産後ケア事業を一定期間利用するには、補助があってもそれなりの金額を用意する必要があります。そのような経済的な理由によって、産後ケアを受けたいけれど断念してしまうという人は、決して少なくないでしょう。
現在、政府が産後ケアを含めた妊娠、出産、そして子育てにかかわる経済的負担の軽減を目指した総合経済対策を打ち出し、検討していることがわかっています。その具体的な対策としてあげられているのが、出産・育児の「伴走型支援」です。
出産・育児の伴走型支援とは
今回の支援の対象となるのは、主に0~2歳までの子育て世代です。その世代に寄り添って支援する=伴走するのが、支援の主な目的とされています。
具体的な対策は二つあります。一つは「相談支援」です。妊娠中~産後、そして子どもがある程度大きくなるまで同じ保健師が相談を受け、寄り添いながら、育児の不安を軽減していくことがあげられています。
二つ目の対策は「経済的支援」です。妊娠・出産時の関連用品の購入費助成や産前・産後ケア、一時預かり、家事支援サービスなどの利用負担を軽減するための経済的支援を行うことが提案されています。支援額については「妊娠届出時及び出生届出時を通じて計10万円相当」とされており、妊娠中に5万円、出産後に5万円、計10万円分のクーポン券を支給する案などが報道されています。最終的にどのようになるのかは来年度(2023年4月)以降に決定されるとのことなので、今後も引き続きチェックが必要です。
5万円で産後ケアはどれだけ利用できる?
ところで、仮に出産時に5万円が支給され、それをすべて自治体の産後ケア事業に使う場合、どれだけ利用できるのでしょうか。
例えば宿泊型の産後ケアを東京都で利用すると、施設にもよりますが、1日あたりの利用料が5,000~6,000円くらいのところが多いようです。仮に1日あたり5,000円で利用できるとすると、利用料は1泊2日で10,000円、2泊3日で15,000円……と、1日増えるごとに5,000円ずつ増えていきます。したがって単純計算ではありますが、5万円分のクーポンをすべて産後ケアに使った場合、9泊10日分の宿泊型産後ケアが利用できることになります。
>>助成実施自治体名から産後ケア施設を検索
実際は「6泊7日まで」など、自治体で利用上限を設けているケースもあるため、この通りにはならないかもしれませんが、支給分でゆったり産後ケアを受けられるということがわかると、育児や産後の体調に不安を持つママやご家族の不安が、少しは軽減されるのではないでしょうか。
「本当にためになるケア」に期待
「相談支援」についても、東京都の渋谷区などではすでに「子育てネウボラ」と呼ばれる同様の取り組みを自主的に始めています。妊娠中~子どもが18歳になるまで、同じ保健師さんに繰り返し相談ができる仕組みが作られているのだとか。同じ人に継続して相談ができると、悩みを一から話す手間がなくなり、気軽に相談できるようにもなりますね。核家族化が進み、子育てなどの悩みを相談できる人が身近にいない人も少なくない現代、こうした取り組みにありがたい面があることはたしかです。
ただし、子育ては子どもがある程度大きくなるまでずっと続いていくこと。「伴走型支援」と言っても、現段階で打ち出されている支援策のうち、伴走型といえるのは相談支援のみです。クーポンは1回きりの支給になるため、相談支援以外にも、伴走型の支援を用意する必要があるでしょう。
支援の詳細がわかるのはまだ先とのことなので、子育て世代が本当に望む内容になるのかどうか、引き続き注視していきましょう。
参考:
新たな総合経済対策が目指すもの | 首相官邸ホームページ
https://www.kantei.go.jp/jp/keizaitaisaku_kishida/index.html
物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策(令和4年10月28日)|内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2022-2/20221028_taisaku.pdf