≪医師監修≫産後の生理、再開するのはいつ?産後の生理のお悩みとケア

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産後の生理、いつ再開するの?生理がはじまるタイミングは

産後の生理がいつ再開するのか、気になる方も多いのではないでしょうか。産後の生理が始まるタイミングについて知っておくことは、異常の早期発見や家族計画を立てるうえでも役立ちます。ここでは産後の生理が始まるタイミングについてご紹介します。

産後の生理の再開は、個人差が大きい

産後の生理がいつ再開するのかについては個人差が大きいため、具体的にいつ再開するということは明言できません。一般的には、完全ミルクの場合には、産後約1~2か月すると生理が始まることが多いとされています。いっぽう、授乳を続けている場合は、プロラクチンの影響で、卵巣機能が抑制され、産後1~2年近く生理が再開しないケースも少なくないようです。
あるアンケート調査では生後3か月までに生理が再開したという方がアンケート回答者全体の3割程度となっており、産後半年までに約半数の方に生理が再開したという結果となりました(ユニ・チャーム調べ:2019/4/10~5/8に実施したアンケートより)。

また、産後の生理も再開したばかりの頃は月経周期もバラバラな場合が多く、一度生理はきたけれどまたしばらく来なくなり、「これって、生理?別の原因による出血?」と、悩みの種になることもあります。

産後の生理の再開にはホルモンの影響がある

産後の生理の再開に最も関係しているのがホルモンです。そもそも生理は卵胞を育てて排卵を促すエストロゲンと、子宮内膜を厚くして妊娠をしやすい身体に整えるプロゲステロンのバランスによって起こります。
生理は、妊娠が成立しなかったことを身体が認知したときにプロゲステロンの分泌量が急激に減り、そのタイミングで生理が起こります。

授乳の回数が減る、卒乳するタイミングで生理がはじまることも

産後の生理の再開のカギを握るホルモンの分泌に、最も影響を及ぼしているのが授乳です。授乳中には脳からプロラクチンというホルモンが分泌されています。このプロラクチンは母乳を作る働きのあるホルモンなので、授乳をしている間には必ず分泌されている状態なのです。
このプロラクチンは卵巣の機能を抑える働きがあるため、プロラクチンが分泌される間には排卵が起こりにくい状態となります。
つまり、プロラクチンが分泌している授乳中には生理が起こりにくくなるのです。ただし、プロラクチンは授乳の回数が減ってくると分泌量が徐々に減ってきます。そのため、授乳の回数が減ったタイミングや卒乳するタイミングで、生理が再開しやすくなるのです。

産後の生理に関するよくある心配ごと

産後の生理に関する心配事や悩みや人によってさまざまですが、多くの方が産後の生理に関して心配ごとを抱えています。ここでは、産後の生理に関してよくある心配ごとをご紹介します。

なかなか再開しないけれど大丈夫?

先ほどもご紹介したように、産後はホルモンバランスが乱れていたり、授乳によって卵巣の機能をストップするホルモンが分泌されていたりするので、生理の再開するタイミングには個人差がある場合がほとんどです。つまり、生理が開始できるくらいにホルモンのバランスが整うまでは時間がかかるということになります。
また、ホルモンバランスは産後による影響や授乳によるもののみで乱れているわけではありません。産後の慣れない育児による疲労や寝不足、ストレスもホルモンバランスの乱れには関与しています。
ですので、まずは自分の体調に気をつけながら生理の再開を待ちましょう。

経血量や生理周期が不安定…

生理の再開を無事に確認しても以前より経血の量が多くなった、生理の周期が不安定になったといった悩みも多く聞かれます。
生理が再開してもしばらくはホルモンのバランスが妊娠前のように安定していません。特に授乳を続けているという方は、生理が再開したけれどまた止まったり、妊娠前よりも生理の周期が長くなったりすることもあります。
経血量が多くなったり少なくなったりすることもあるでしょう。生理再開後しばらくは生理の周期や経血量は不安定と思っておいてもよいでしょう。

生理が再開しなくても、妊娠することはある?

「生理がこない=妊娠しない」と思われる方もいるかもしれません。実は生理の出血が無くても排卵が再開しているケースや生理再開とともに排卵する場合もあります。ですので、生理が再開していなくても妊娠する可能性は十分にあるのです。
妊娠を望まない場合は、生理が再開していなくても避妊をするようにしましょう。ただし、低用量ピルによる避妊は、授乳中に服用すると、母乳を介して赤ちゃんに低用量ピルに含まれるホルモンが移行する可能性があるため、医師に相談が必要です。

痛み止めは授乳中でも飲んでいいの?

出産後に生理が再開したら生理痛が妊娠前より辛くなったということもあります。まだ、授乳をしているけれど痛み止めを飲んで良いのかどうか悩まれるかもしれません。
基本的に授乳中でもカロナール(成分:アセトアミノフェン)やロキソニン(成分:ロキソプロフェン)など普段使われる鎮痛剤を服用できます。
ただし、アスピリン(アセチルサリチル酸)については、大量に服用していた母親の母乳を飲んだ赤ちゃんに、出血傾向がみられたという報告がされているため、注意が必要です。
市販薬は成分が様々あるため、服用せざるを得ない場合は、必ず注意書きを確認しましょう。授乳中の薬については、以下のサイトからも飲める薬、適さない薬を確認することができます。
ただし、授乳中に薬を服用または中止するときは、自己判断をせず、医師や薬剤師に相談することが大切です。

参考:国立成育医療研究センタ「授乳と薬について知りたい方へ」
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_yakkou.html#section1

産後の生理、おうちでできるケアと受診の目安

産後の生理について悩みや心配があっても子育てをしなければならず、出来るなら自宅でケアをしたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
産後の生理に対してお家でできるケアと、受診の目安をご紹介します。

おうちでできる産後の生理ケア

おうちで産後にできる生理ケアは、なるべく無理をしすぎないよう生活することです。慣れない子育てにストレスはたまるかもしれませんし、寝不足などで疲労が蓄積しているかもしれません。
しかし、大きなストレスや睡眠不足が続いている状態は生理の再開を遠ざけたり、生理が再開しても生理不順の原因となることがあります。 お母さんと赤ちゃんが一緒に利用できる産後ケア施設や、自治体のファミリーサポートセンターを利用するなどしてストレスや疲労を適宜解消しながら過ごしてみましょう。

また、初めての生理が始まる前から排卵は行われており、生理が1度もきていなくても、妊娠することがあります。産後すぐの妊娠はお母さんの体への負担が大きいため、産後は生理がきていなくてもコンドームなどで避妊をしっかりすることが重要です。

婦人科・産婦人科受診の目安

婦人科や産婦人科の受診目安は次の通りです。

  • 授乳を続けている場合で産後1年以上、もしくは卒乳後6週間経過しても生理がこない
  • 生理再開が確認された後に生理の間が3ヶ月以上空く
  • 昼用(多い日用)ナプキンを1-2時間であふれる程度の経血がある
  • 経血に血の塊(500 円玉大以上の塊が続く、または手のひら大の塊)が混じっている
  • 生理が月に2回以上ある
  • 動悸や息切れなどの貧血の症状が強い

この状態のまま放置をすると、貧血になったり次の妊娠に影響が出る可能性もあります。受診の目安に該当した場合や、該当しない場合でも不安なことがあれば、なるべく早めに産婦人科医や婦人科医へ相談しましょう。

まとめ

産後の生理についていろいろな悩みを持たれる方も多いですが、産後の生理はすぐに来ないというのが一般的であり、個人差があります。

まずは育児をしながら自分の心や身体を整え、生理が来るのを待ってみましょう。もしも、生理に関して気になることがあれば早めに産婦人科や婦人科へ相談してみてください。

産婦人科医 柴田綾子先生からのコメント

産後の生理がいつくるか、とても心配になる方が多いと思います。産後の生理は、個人差が大きく1ヶ月で再開する人もいれば、産後1年以上来ない方もいらっしゃいます。睡眠不足や大きなストレスでも生理不順は起こるため、まずは体調を整えお母さんが休める時間をつくるのが大切です。お住まいの自治体の産後ケア施設やファミリーサポートの活用もお勧めです。
また、生理は始まっていなくても排卵は起きているため、産後も避妊はしっかりするようにしてください。困ったり心配なことがあれば、お近くの産婦人科や助産院へご相談ください。

監修者プロフィール:
柴田綾子(しばた あやこ)

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医、周産期母体・胎児専門医
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修し2013年より現職。女性の健康に関する情報発信やセミナーを中心に活動。
著書:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、産婦人科ポケットガイド(金芳堂,2020)。
女性診療エッセンス100(日本医事新報社,2021)明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社,2022)

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